新たな人材育成方針として「自主学習文化」の醸成を掲げ、自ら学ぶ環境を整えるために、2021年4月より『GLOPLA LMS』を導入。階層別研修の案内や事前学習などにLMSを活用し、日本全国および世界各地に駐在する社員が、自分が学びたいタイミングで課題に取り組むことができ、集合研修の質が向上した。
株式会社アイセロは、愛知県豊橋市に本社を置く化学メーカーです。製品によっては国内シェア80%超を誇るニッチトップ企業で、積極的なグローバル展開もしており、海外売上比率は約45%にのぼります。同社では、近年の激しい環境変化をふまえ、変化を恐れずに自主的に学んで成長する社員を育成する方針を掲げました。この目的のもとで2021年4月より『GLOPLA LMS』を導入し、階層別研修を中心にご利用中です。LMS導入後の学習状況や研修運営の変化について、お話を伺いました。
水口さん(以下、敬称略):コロナ禍や世界情勢の変化による原材料・エネルギー価格の高騰、物流網の混乱、環境に考慮したサプライチェーン構築など、製造業が直面している環境変化は目まぐるしいものがあります。
こうした製造業を取り巻く激しい環境変化に加え、働き方の変化をふまえた新しい仕事の進め方も模索している中で、当社の社員一人ひとりが変化を恐れずに業務に向き合う必要性が生じていました。環境変化に対応し続けるためには、自主的に学び、成長する姿勢を育むことが欠かせません。この「自主学習文化」の醸成は、今後の当社の成長を左右する重要な取り組みだと位置付けています。
「自主学習文化」の醸成にあたっては、学ぶ環境を整備するだけでなく、階層別教育の見直しも必要でした。当社の階層別教育は、全員一律の教育を施すことを前提としたものでした。一方で、業務においてはこれまで常識と思っていたものが通用しない場面が増えており、教えてもらったことをそのまま実践すればいいとは限らなくなっているのです。自ら学び、自ら考えて行動する文化を育むにあたって、既存の研修内容も変えていかなければなりませんでした。
山本さん(以下、敬称略):「自主学習文化」を育む環境づくりには、自ら学びたいと思ったタイミングで学べる環境が必要だと考え、LMS導入の検討を始めました。さらにコロナ禍で、集合研修が実施しにくくなっていたことも、もう一つのきっかけでした。
当社は日本全国、そしてアジア・北米・ヨーロッパにも拠点があり、特に海外駐在している日本人社員へは、教育機会が手薄になってしまう課題をかねてから抱えていました。コロナ禍以前から、海外駐在員はタイミングが合えば集合研修に参加してもらうという状態になっていたのです。この課題が、コロナ禍による移動の制限が生じたためにより深刻になり、何らかの手段で解決したいと考えるようになりました。
代替策としてはオンライン研修がありますが、日本と時差が大きい地域で働く社員もいますし、働き方が多様になっていたため、社員一人ひとりのスケジュールに応じて学べる環境を準備したほうがいいだろうと思っていました。
社員からも「自分の都合がつく時間に学習できるものがあると嬉しい」という前向きな要望が上がり始めていたため、LMSの導入を検討することになりました。
田代さん(以下、敬称略): 当時、LMSと並行して、自主的に学べる動画コンテンツの導入も検討していたので、LMSと動画学習サービスの両方を手がけている会社のサービスを使いたいと考えていました。
動画コンテンツは、階層別研修の事前課題に活用したいと思って検討を進めていました。事前課題で基本的な知識を理解したうえで、集合研修当日はディスカッションや実践につながるワークを中心に行いたいと考えていたのです。
LMS導入にあたっては、複数のサービスのデモ環境を使って比較検討しました。最終的に2社に絞り込んだ後、GLOPLA LMSに決めたのは、シンプルで使いやすいシステムだと感じたからです。そして、我々がGLOPLA LMSの導入を決めた2021年4月はサービス開始から間もない時期で、開発中の機能も多い状況でした。
水口:当時のGLOPLA LMSは不確定な要素も多くありましたが、その時期に導入を決めたのは、当社の要望にも向き合っていただきながら、グロービスと一緒に成長して未来をつくっていけるのではないかとの期待があったからです。その背景には、同じ時期に導入を決めた「GLOBIS 学び放題」が非常に魅力的で、当社の希望とマッチしていたものであり、グロービスは信頼に足る企業であると感じたこともありました。
水口:若手、中堅、新任管理職など階層別の研修で活用しています。GLOPLA LMSから研修の案内を行い、事前課題には社内で制作した動画のほか、GLOBIS 学び放題のコンテンツを利用することもあります。レポートの提出や受講後アンケートもGLOPLA LMSで実施しており、管理側の工数削減につながりました。
そして、集合せずとも各自が学べる環境が整い、社員一人ひとりが自ら学習を進めてもらっている様子がうかがえており、「自主学習文化」を育む第一歩を踏み出せたと思います。
田代:これまで、レポートやアンケートは紙媒体、あるいはメールで送付してもらっていました。紙媒体は管理が大変ですし、メールは一人ひとりに受領した旨を返信する時間が取られ、提出状況の把握も一苦労でした。こうした作業時間はGLOPLA LMS導入によって減らせたのでありがたく思っています。
また、徐々に機能がアップデートされていき、今では研修にまつわる多くの工程でGLOPLA LMSを利用できるので、我々の管理工数が減っただけでなく、受講者にとってもわかりやすいフローになったと思います。
山本:動画を用いた事前課題も、GLOPLA LMS導入をきっかけに始めました。研修に関する知見を豊富に持ったGLOPLA LMSカスタマーサクセス担当からアドバイスをいただき、通勤中などのスキマ時間でも課題を確認しやすいよう、複数の短い動画を作成したのです。こうすると動画1つ分だけでも視聴できますし、理解できなかった部分だけ見返すこともしやすくなりました。
田代:これまでは、研修に事前課題を取り入れていなかったんです。当社にその知見と運営ノウハウがなかったことが理由です。研修の課題としては、研修で学んだ内容を職場でどう活かすかの行動計画を立てる事後課題に留まっていました。
GLOPLA LMSを活用して事前課題を取り入れた後は、期待通り、集合研修では実践につながるワークやディスカッションの比重を増やすことができています。
水口:事前学習によって、受講者の意識にも変化が見られています。集合研修の前半に事前学習の内容確認をすると、「それよりも実践的なワークをやりたい」という意見が挙がるようになったんです。受講者が研修に求めるレベルが一段上がったことを感じます。
田代:若手〜中堅社員はITツールの操作に慣れている世代でもあり、操作面での問い合わせは一切なく、問題なくGLOPLA LMSを使いこなしています。ミドル層以上の社員など、不慣れな方へはHR部で用意した操作マニュアルをご案内しつつ個別にフォローしている状況ですが、繰り返し使うことで操作にも慣れてくると思います。
また、当社からグロービスへGLOPLA LMSの使い方を相談したり、要望を伝えたりする機会が定期的にあり、期待通りの対応と開発をしていただいていると思っています。HR部に新しく入ったメンバーへ操作のサポートも親身にしていただき、GLOPLA LMSのカスタマーサクセス担当には感謝しています。
水口:当社のような地方の中堅規模の企業にとっては、利用している外部サービスの運営企業が、定期的に要望を聞いてくださる機会を得られることは滅多にないと思うのです。グロービスには我々の意見を真摯に受け入れ、ご対応いただいていて本当にありがたいです。
水口:まずは、「自主学習文化」の醸成に腰を据えて注力します。どれだけ優れた学習環境を整えても、自ら学ぶ姿勢がなければ社員の成長にはつながりにくいと思うのです。
文化醸成のカギを握るのは、デジタルネイティブ世代の若手社員だと考えています。彼ら・彼女らが自主学習を習慣化して、部下をもつ時が来たら、自分がどのように自主学習をしてきたのかを語り継いでもらう状態にまで至れば、文化として根付いていくでしょう。この長い時間軸を見据えて、何度も繰り返し、自主学習の大切さを伝え続けていきたいと思います。
山本:LMSの活用においては、さまざまな研修の他に、当社がもつノウハウやスキルも学べる「アイセロ大学」のような場に昇華させたいと構想しています。独自の技術ノウハウや先輩社員の知見をコンテンツ化し、LMSへ搭載していけたらいいですよね。
水口:たとえば製造現場で作業している場面を撮影し、技術職のメンバーがいつでも学べるように落とし込んでいく、といったことです。
現在は、業務のノウハウ伝承はOJTで行われており、製造現場ではデジタル化が進んでいるものの、ベテラン社員にとっては当たり前のちょっとしたノウハウが伝承されないことが起こりがちです。当社の優位性につながる技術やノウハウは、ベテラン社員の頭の中だけにある場合も少なくありません。それらを受け継ぐ若手社員はデジタルに馴染みのある世代ですから、デジタルで学べる環境をもっと整えることで、成長を加速させられるのではないかと思うのです。ベテランが現場から抜けた後も、こうしたノウハウを活かし続けられるよう、コンテンツとして落とし込んでいくことは、当社の成長にとって重要だと考えているところです。
文化の醸成も、社内ノウハウのコンテンツ化も、一朝一夕にできることではありません。目指す姿の実現に向けて、HR部としては何年もかけて、粘り強く取り組んでいきたいと思います。