企業のAI活用を進めるには?
〜個人のレベルに合ったAI学習で、組織全体のAI活用を後押し〜
AIを初めて学ぶ社員から、組織変革を担うリーダーまで。必要な知識と役割に合わせた4段階の学習設計と、職場で実践につなげるポイントを解説します。
企業のAI活用が「一律学習」だけでは進みにくい理由
生成AIの業務利用が広がり、AIリテラシーは、幅広いビジネスパーソンに求められる共通スキルになりつつあります。企業でも生成AI研修を導入する動きが進む一方、「研修を用意したものの、実務での効率化や価値発揮まで繋がらない」という課題も生まれています。
その背景にあるのが、社員ごとの習熟度や役割の違いです。AIを滅多に使わない社員と、日常的に生成AIを使う社員では、必要な学びが異なります。さらに、個人の作業を効率化したい人と、AIエージェントを業務プロセスに組み込みたい人、経営や組織開発の観点からAI活用をリードする管理職では、身につけるべき知識も期待される行動も同じではありません。
全社員に同じ内容を提供すると、初心者には難しく、経験者には物足りない研修になりがちです。その結果、学習が止まったり、一部の詳しい社員だけにAI活用が集中したりします。
AI活用を進めるために必要な人材育成
企業のAI人材育成では、全社員に最低限必要な共通知識を整えながら、習熟度と役割に応じて学びを段階化することが重要です。
入門層には、AIで何ができるかを身近な事例から理解してもらう。
利用層には、基本用語や生成AIの仕組み、リスク、プロンプトを学んでもらう。
実践層には、日々の業務やワークフローにAIを組み込む方法を考えてもらう。
管理職や推進人材には、AIを経営戦略や組織開発、人材育成と結びつける視点を持ってもらう。
このように到達点を分けることで、学びを実際の役割につなげやすくなります。
人事・人材育成担当者には、対象者、受講順序、進捗確認、職場での実践までを一つの仕組みとして設計する視点が求められます。AI・DXスキル等級制度がある場合も、等級ごとに必要な知識や行動を整理し、研修体系と対応させることが出発点です。
4段階で学ぶ「AIリテラシーグレード」
GLOBIS 学び放題の「AIリテラシーグレード」は、社員のAI習熟度に応じて学習内容を4段階に整理したラーニングパスです。AIに初めて触れる人向けの基礎から、安全な業務利用、業務プロセスへの組み込み、組織全体のAI活用をリードするための学びまでを段階的に提供します。
受講者は、習熟度や役割に合うグレードのラーニングパスを選ぶことで、コースを探す手間を抑えて必要な知識を、理解が深まりやすい順序で学べます。法人受講者の場合は、管理者が各グレードの「指定ラーニングパス」を設定し、社員の進捗把握に活用できます。
| グレード | 名称 | 主な対象者 | 主な学習テーマ |
|---|---|---|---|
| 0 | エントリー | AI初心者、苦手意識がある社員 | AIの基本、身近な活用例 |
| 1 | ベーシック | 業務でAIを使うすべての社員 | 基本用語、プロンプトのコツ、リスク管理 |
| 2 | プラクティス | AIを業務に組み込む担当者 | Copilot、AIエージェント基礎 |
| 3 | リード | AIを組織に広げるリーダー | 経営戦略、組織開発、AIエージェント実践 |
グレード0:エントリー まずはAIを身近に感じる
グレード0は、AIを初めて学ぶ人や、AIに苦手意識がある人向けの入口です。「生成AI ~新たな価値を生成するAIとの向き合い方~」で基本的な考え方を学び、「マンガで学ぶAI入門」シリーズで誤字脱字のチェック、文章のアイデア、リサーチ、メール、スライド、Webサイト作成など、身近な利用場面に触れて学びを深めます。全社員向けAI研修の導入段階に取り入れやすい構成です。
グレード1:ベーシック 安全に使うための共通言語を整える
グレード1は、業務でAIを利用するすべての社員に向けた基礎段階です。生成AIを支える技術、AIの基本用語、プロンプトの考え方に加え、ガバナンス・リスク・コンプライアンスや、AIの弱点を踏まえて出力を扱う姿勢を学びます。
主な内容には「生成AIをあなたのビジネスに活用するには?」、AIの社会的インパクトやリテラシーを押さえられる「AI BUSINESS SHIFT」基礎編、「【これだけは押さえておきたい】AIの基本用語」、思考力を活かしてAIを活用する方法が学べる「【AI×クリティカル・シンキング】」などで、最後に確認テストで学びの定着度を確かめます。
AIの出力には誤りや偏りが含まれる可能性があるため、入力情報の取り扱いにも注意が必要です。グレード1を全社の共通基盤に位置づけることで、AI利用時の確認事項やルールについて共通言語をつくりやすくなります。
グレード2:プラクティス 個人利用から業務プロセス改善へ
グレード2は、AIを日々の業務で利用し、効率化や成果創出につなげたい実践層向けです。Microsoft Copilot(Excel・PowerPoint)でのAI活用方法、問いの設計方法を学びます。
重要なのは、AIを単発の作業支援で終わらせず、定型業務やワークフローのどこに組み込めるかを考えることです。人が目的を定め、指示し、出力を評価・改善する役割分担を意識すると、実務への適用範囲が広がります。
グレード3:リード AIを経営・組織の変革につなげる
グレード3は、管理職、経営企画・DX推進、人事担当者など、AI活用を組織へ広げる立場の人向けです。AI時代のリーダーのスキル、ビジネス変革、経営戦略、組織開発・人材育成に加え、CopilotエージェントやMCP(Model Context Protocol)など、AIと業務ツールをつなぐ仕組みも扱います。
リーダーには、どの経営課題にAIを使うのか、人とAIの役割をどう分けるのか、ルールと育成環境をどう整えるのかを考える責任があります。グレード3は、個人でのAI活用にとどまらず、AIを活用した組織変革を見据え、組織全体のAI活用を推進していくための考え方を学び、実践力を高めます。
企業での活用方法:動画視聴を「実践」と「対話」につなげる
習熟度と役割に応じて「指定ラーニングパス」を設定する
まず、自社のAI・DXスキル基準や職務要件を踏まえ、対象者をグレード0~3に整理します。例えば、入門層にはグレード0、業務でAIを使う一般社員にはグレード1、実践層や部門推進担当者にはグレード2、管理職・推進人材にはグレード3を割り当てます。管理者が指定ラーニングパスとして設定し、一定期間ごとに進捗を確認すれば、社員が AIのコース選択に迷いにくくなり、企業として必要な学習を支援しやすくなります。
グレードを固定的な序列にせず、職務や利用環境に応じて必要な段階から学ぶ方法も考えられます。「知識」「利用経験」「業務での実践」「組織への展開」で判定基準を整理すると、割り当ての納得感を高めやすくなります。
視聴後に小さな実践課題を設定する
知識を業務行動に移すには、動画視聴と職場での実践を組み合わせることが有効です。グレード1・2の受講後に、「自分の業務でAIを活用できる場面を一つ選ぶ」といった課題を設定します。課題には、メール作成、情報整理、資料作成、Excel作業など、受講者の実務に近く、試行結果を確認しやすいテーマが適しています。
さらに、実践前後の手順、成果物、気づき、注意点を記録し、チームで共有するのもおすすめです。失敗例や確認が必要だった点も扱えば、再利用できる知見になります。動画視聴だけで成果を保証するものではありませんが、実践と振り返りを組み合わせることで業務改善につなげやすくなります。
管理職研修やDX推進者育成の事前学習にする
グレード3は、集合研修やワークショップの事前学習としても活用できます。受講後に「自部門でAI活用を進める際の課題」「人とAIの役割分担」「必要なルールや育成施策」を討議すれば、集合研修の時間を自社固有の課題や施策設計に充てやすくなります。
討議結果は、対象業務、責任者、試行範囲、確認指標、リスク対応を含む実践計画に落とし込みます。管理職自身がAIを理解し、部下の実践を支援することが展開の土台になります。
AI人材育成を全社展開する際の3つのポイント
第1に、全社員に求める最低限のAIリテラシーを明確にすることです。安全な利用、情報の扱い、出力の確認など、役割を問わず必要な基準を定めます。
第2に、学習進捗だけでなく実践状況を見ることです。修了率に加え、どの業務で試したか、どのような注意点が見つかったかを共有できる仕組みを整えます。
第3に、学習体系を定期的に見直すことです。AIの機能や社会のニーズは変化するため、コース内容、対象者、社内ルールとの整合性を継続して確認する必要があります。
AI活用を社員個人の自主性だけに委ねると、学習機会や活用状況の差が広がりやすくなります。人事・人材育成部門、DX・AI推進部門、現場の管理職が役割を分担し、学習、実践、共有、改善のサイクルを回すことが重要です。
習熟度別の学習設計を、企業のAI活用の土台に
企業のAI活用を進めるには、全社員に同じ内容を一律に学ばせるだけでは十分ではありません。AIを初めて学ぶ社員、実務で使う社員、業務プロセスを改善する社員、組織変革を担うリーダーでは、必要な知識と期待される役割が異なります。
「AIリテラシーグレード」は、こうした違いに応じて学習内容を4段階に整理し、社員が次に学ぶべき内容を見つけやすくするラーニングパスです。自社の育成方針に合わせて指定学習を設定し、進捗を把握するとともに、職場での実践課題や対話を組み合わせることで、全社的なAIリテラシー向上の土台をつくれます。
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