完璧を目指さず、まず動く。テクノベート基礎の学びを活かし、新規事業をアジャイルに推進する
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課題
- プロダクトの売り切りモデルから脱却し、新規事業の収益モデルを構想する難しさを感じていた
- 高い安全性・品質が求められる製品を扱うがゆえの慎重な行動習慣と、新規事業に必要なスピード感との間で葛藤があった
- リーダーとして、テクノロジーをビジネス価値に転換する力を高めたいという危機感が募っていた
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受講内容
- 「とにかく手を動かし、走りながら考える」という講師のメッセージが強く印象に残った
- 多様な受講生同士の議論から、自社におけるテクノロジー活用の視点が広がった
- クラス後の懇親会が、悩みを相談し合う実践的なメンタリングの場になった
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成果
- 叩き台を素早く作り、チームで議論しながら前に進めるスタイルへ変化しつつある
- 短い打ち合わせやその場での相談を増やし、 アジャイルな仕事の進め方を実践中
- メンバーを信頼して仕事を大胆に任せ、モチベーションを高めるリーダーシップを発揮していきたい
背景と課題
新規事業の立ち上げに奔走する日々
新卒で積水化学工業に入社し、営業職を経て、長きにわたって製品の企画に関わってきました。
現在は、新規事業の企画・推進を担う部署に所属し、新しいプロジェクトを立ち上げて4年目になります。リーダーの私を含めて9名という、社内でも比較的小さなチームです。プロダクトのプロトタイプを作成し、様々なお客様とPoC(実証実験)を繰り返している段階にあります。
自社のカルチャーと、新規事業に求められる行動との間で生まれた葛藤
現在取り組んでいる新規事業立案において、最大のチャレンジになっているのがビジネスモデルの大きな転換です。当社は、優れた製品を開発し、生産して売るというビジネスモデルを主軸として歴史を築いてきました。しかしながら、多様化する顧客ニーズやテクノロジーが急速に発展する現代において、それだけでは持続的な成長が難しくなります。
こうした背景から、今回のプロジェクトでは、サービスや周辺システムを組み合わせた新しいビジネスモデルの創出を模索しています。しかしながら、プロダクトの売り切りという思考様式や成功体験から抜け出すのが難しいと痛感する日々です。
今回の新規事業の肝は、サービスを融合したビジネスモデルを描き、そこから存続可能な収益モデルを設計することです。その中でも、具体的なマネタイズの道筋を見つけることに苦戦しています。プロジェクトリーダーである自分自身が、テクノロジーをビジネスに転換する力を高めなければならないという危機感を募らせていました。
もう一つ、新規事業立ち上げにおいて課題を感じていたのが、今の行動習慣との葛藤でした。当社は、社会インフラを支える、極めて高い安全性と品質が要求される製品を多く扱っています。そのため、あらゆるリスクを想定し、時間をかけて検証を重ねてから行動に移すことを強みとし、社会から信頼を得てきました。
ところが、新規事業は何が正しいか誰もわからない不確実な世界です。私自身もチームメンバーも頭では理解していたつもりでしたが、無意識のうちに「しっかり確認し、合意形成してから前に進む」という行動を取りがちでした。品質検査のように時間をかけて確実に検証すべき部分と、新規事業のプロトタイピングのように即座に試すべき部分。その切り分けが自分の中でも明確になっておらず、チームに対して具体的な行動変容を示すことができていませんでした。
自分の課題感にフィットした「テクノベート基礎」を受講
こうした課題感を抱えていた時に、人事部からグロービス・マネジメント・スクール(以降、GMS)の社内公募がありました。そこで新科目「テクノベート基礎(※)」が目に留まり、自身の課題解決につながるヒントが得られるのではないかと考え、応募しました。
過去にこの公募制度で「マーケティング・経営戦略基礎」と「ファイナンス基礎」の受講経験があり、GMSは実践的な学びを得られる場であることは知っていたため、講義の進め方に対する不安はなく、楽しみな気持ちが強くありました。
ただ、今回の「テクノベート基礎」は新科目ということもあり、最初はプロンプトの具体的な入力方法など、テクノロジーのツール活用や実技の面で「自分にしっかりついていけるだろうか」という不安は少なからずありました。
※「テクノベート」とは、テクノロジーとイノベーションを掛け合わせたグロービスの造語です。
事前準備と受講内容
最大の学びは、行動力とそのスピードの大切さだった
実は受講前「テクノベート基礎」という科目名から、生成AIの活用方法や高度なデータ解析手法など、テクニカルなことを多く学ぶのをイメージしていました。
ところが、実際に受講して、当初のイメージはよい意味で覆されました。その中でも強く印象に残っていることは、講師から繰り返し伝えられた「とにかくまず手を動かすこと。走りながら考え、やりながら修正すること」というメッセージです。テクノロジーの進化によって、アイデアを形にするためのコストや時間は大幅に低下しています。誰でも簡単に生成AIなどを使ってプロトタイプを作れる環境があるからこそ、本質的なボトルネックは技術力ではなく、行動を起こすスピードにあるのだと痛感しました。
他業界の受講生との議論で、テクノロジー活用の視点が広がる
私はオンラインクラスに参加し、日本全国にいる幅広い業界の方々と一緒に3か月間学びました。グループディスカッションでは、自分の視野を広げる多くのきっかけをもらえたと思っています。例えば、生成AIの導入について、ある方は、「コンシューマー向けビジネスを展開しているので、社内の情報セキュリティが厳格で、思うように使いきれていない」と語っていました。あるいは、個人として生成AIを活用している方は、「組織のカルチャーとして社内にどう浸透させていくかが課題」という話をしていましたね。AIに任せる作業と、人間が担うべき業務範囲のすみ分けは、私を含め多くのメンバーが向き合っている課題でした。
どの業界も生成AIの活用というテーマは共通でありながら、他業界のリアルな話に触れることで、テクノロジーをビジネスに活かすための新たな視点を得ることができました。
クラス後の懇親会が、実践的なメンタリングの場に
毎回のクラス終了後、有志のメンバーがオンライン上に残り、簡単な懇親会を開いていました。その場でのフランクな話からも、多くの気づきと学びが得られました。
懇親会は、受講生同士で今の仕事における悩みを打ち明け、講師や他の仲間から意見をもらうという実践的なメンタリングともいえる時間でした。私からは、「チームでアジャイルに動きたいと思っているものの、慎重に物事を進める長年の行動習慣から抜けきれない」という悩みをぶつけました。どうチームにアプローチし、どのような思考プロセスを踏むべきか、多くの意見をもらったことを鮮明に覚えています。テクノロジーをビジネスの価値に転換するには、技術力を超えて、最終的には組織風土の変革が欠かせないのだと気付かされました。
成果と今後の展望
完成度よりスピード重視で、「叩き台をもとに議論する」スタイルへ
受講から3か月が経過し、まず私自身の仕事の進め方が変わりました。以前は、資料を作成する際、自分一人で時間をかけて精緻に作り込み、完成度を高めてからメンバーに共有していました。しかし今は、会社のレギュレーションの範囲内であることを確認したうえで、生成AIを最大限に活用し、アイデアの叩き台を作成してできるだけ早くチーム内で共有しています。「完璧ではない、曖昧な状態のものであっても、それをもとにみんなで議論してアイデアを揉む」というスタイルを常に意識しています。
チーム内のコミュニケーションも、会議を開くだけではなく、短い打ち合わせやその場での相談を増やしています。対話し、次にやるべき行動を小さくとも決めていく。こうして、アジャイルな仕事のスタイルへ変わろうとしている真っ最中です。
現在手がけている新規事業は、方向性の転換を検討している過渡期にあります。何かを変えることには抵抗や不安を伴うため、実際にメンバーからも反発や戸惑いの声が上がっています。そこから目をそらさず、時間をかけてじっくりとディスカッションを重ねています。
不確実性を受け入れ、「まず手を動かして、検証する」行動習慣をチームに定着させながら、この局面を乗り越えていきたいと思います。
モノ売りから、コト売りへ。学びをプロジェクトの正式な事業化につなげたい
ビジネスモデルを具体化するための考え方、特にモノ売りからコト売りへのビジネスモデルへ転換する視点について、クラスで扱ったケースメソッドから多くの学びを得ました。インフラ関連に強みを持つ当社に応用できる部分が大いにあり、刺激を受けました。
これからの我々は、顧客視点を持ち「誰に対して、どのような価値を提供し、持続的に収益を得ていくのか」という思考を深めなければなりません。GMSでの学びを活かしながら、現在進めているプロジェクトの正式な事業化を目指します。
自ら抱え込まず、メンバーに大胆に任せ、意欲を引き出せるリーダーを目指して
今回の受講は、私自身のリーダーシップのあり方を見つめ直す機会にもなりました。これまでの私は、何事も自分がまず率先して行動してきたように感じています。
ただ、その姿勢は、裏を返せばメンバーを信頼して、仕事を大胆に任せきれていないとも捉えられます。ともするとメンバーは「自分は信頼されていないのではないか」「自分で動く余地がない」と感じてしまい、知らず知らずのうちにモチベーションの低下を招いていたかもしれません。メンバーを信頼して仕事を大胆に任せ、一人ひとりの意欲を引き出すリーダーシップを実践することが、次の目標です。
伝統ある製造業の強みを活かしながら、不確実な時代にテクノロジーを武器に新しい価値を生み出し続ける組織へ生まれ変わること、そして自分自身がその変革を担うリーダーになるというチャレンジに挑み続けていきたいと思います。