オンライン時代だからこそ求められる、講師の価値とは?

2020.07.1

オンライン化は、“働き方”だけでなく、今まで“なんとなく”で進めていた仕事の設計力と、“本来の価値”を考えさせる機会をもたらしました。これは講師についても同じことが言えます。リアルでは無意識で取得していた情報が、オンラインでは難しい。

 

例えば、雑談や表情からの雰囲気、相槌などの動作による「非言語コミュニケーション」も重要な情報です。オンライン化を積極的に進めてきたグロービスの講師ですが、その情報が見えにくい場において、「オンライン向けにどのように設計やファシリテーションを工夫すれば価値が最大化するのか?」という悩みを抱えました。

 

グロービスには、組織知を集め、還流する組織風土と仕組みがあります。私は部門における組織知の構築と推進の役割を担っていることもあり、「オンライン講師によるナレッジ共有会」を開催し、急激に増えるオンライン研修の価値向上に繋がるようにしました。そこで見えた、オンラインならではの講師の価値についてお届けします。(話し手:谷口 学)

そもそも良い研修とは何か

グロービスでは、研修は「コスト」ではなく「将来のために必要な投資」であり、その投資に見合う教育効果が最大化される場を実現すべきと考えています。

教育効果が最大化されるというのは、言い換えれば再現性高く実践につなげられるかです。そのために必要なのは、①カリキュラムの設計、②講師によるファシリテーション。この2つが重要です。

更には当事者となる受講者や受講者を支援する事務局、物理的な環境なども重要な要素です。これらが1つでも欠けると、良い研修にはなりません。

グロービスではこれらの要素を、累計約3,800社へ実施してきた膨大な数の研修と、年間900名を超える方が入学するグロービス経営大学院にて、愚直に磨き続けてきました。

オンライン研修ならではの難しさ

コロナ禍で突如訪れたオンライン研修。それを乗り越えほっとしている人材開発の方も多いと思います。しかし感想を聞いていると、オンラインでもできるという感触を持った人材開発の方も多い一方で、難しさを感じた人も多いようです。

オンライン研修で難しく感じるのが、空気感が影響する場作りと、議論を戦わせるためのファシリテーションです。なぜ難しいかを紐解くと、例えば下記のようないくつかの要因が挙げられます。

・周りの受講者の温度(熱意・姿勢など)を感じにくい

・緊張感のある場を作りづらいい

・発言するタイミングが掴みにくく、発言機会が減ってしまう

・発言に注目が集まるため、自信のない意見を控えてしまう

つまりオンラインでは、参加者の雰囲気や緊張感といった情報が遮断されてしまうため、受講者側の参加が難しくなったと言えます。

すると、受講者側の参加に助けられていた講師にとっては、いつもどおりやっているけどうまく行かない、という構図になったのです。

組織知で乗り越える

講師のファシリテーション力の高さで評価を得ているグロービスでも、オンラインならではの難しさに戸惑った講師が少なからずいます。

研修を担当している講師は、グロービス経営大学院でも教鞭をとっている人が多く、3月の全面オンライン化に伴い、オンラインクラスの経験も多数あります。一方で積極的な参加姿勢が前提となる大学院と、必ずしもそうではない集合研修では事情が異なります。

もともとグロービスでは、知の還流が積極的に行われています。個人の経験、ノウハウ、Tipsを惜しまずシェアして、互恵的成長を基盤とする組織力で解決し、お客様に品質の高いサービスを届けようとする営みこそ、グロービスの組織文化と言っても過言ではありません。

知の還流は上位職からの指示ではなく、草の根的にあちこちで発生するのが特徴です。講師の研修運営についても同様に行われており、今回のコロナ禍でも迅速に行われました。

オンライン講師によるナレッジ共有会が開催され、講師や関係者含めて総勢60人がオンライン上で集まりました。まさにオンラインセッションであり、数多くの知が活発に交換されたのです。そのいくつかを紹介します。

これまで以上に求められる設計の具体性

結論からお伝えすると、一致したのは「基本的に事前の設計としてやることは同じだが、より具体性を上げる必要がある」ということです。

効果的にファシリテーションを行うための前提となるのは、その準備、いわゆる設計です。研修を設計する際には、研修後に作りたい状態は? 受講者の状況は? といった観点を踏まえて、論点と流れを考える必要があります(インタラクションが必要のない一方的なセッションでは、特にこうしたことを考える必要はありません)。

リアル研修であれば設計が多少大雑把でも、受講者は周りの様子を見ながら理解と発言ができますし、講師も柔軟にサポートができます。しかしオンライン研修では、これに制限がかかります。

従って、講師はこれまで以上に、

・どのような学びを
・どのタイミングで
・どんな問いかけによって
・どんなアクティビティを通して

得てもらうのかを、具体性高く設計しなければなりません。

とすると、当然、講義資料の精緻さも変わり、ZoomなどWeb会議ツールの機能とその使い分けも細かく理解・想定しておく必要があります。

ナレッジ共有会に参加した講師の多くが、この理解のもとに様々な工夫をやっていました。学びを最大化するための設計に向き合ってきたグロービスの講師ならではと言えるかもしれません。

確固たるファシリテーションスキル+オンラインならではのインタラクション

参加・議論を促すために大事なことは、

・発言しようとする気がない
・何を発言してよいかわからない

という、2種類の意見を言わない要因をしっかりと踏まえたファシリテーションと、オンラインならではのインタラクションを行うことです。

「発言しようとする気がない」に対して出た意見が「チェックイン」です。

チェックインとは、「会議の前に、参加者のありのままの状態や感じていること、会議への意気込みを正直に話して共有する時間のこと」(引用;wikipedia)です。チェックインを作ることで、発言しようとする姿勢を一気に作っていきます。

何気ない話題から入る、講師の自己開示から入る、など、様々な工夫が講師から共有されました。

「何を発言してよいかわからない」への対応では、「意見の立場(スタンス)を決める」といった意見が挙がりました。

リアル研修では、なんとなく空気を見ながら発言ができますが、オンライン研修で難しくなるのは既述の通りです。とすると、なんとなく意思表明をしないまま発言も控える、という構図が起こり得ます。

それを避けるために、最初に無理やりにでも立場を決めてもらう(賛成か反対か、AかBかなど)と、その立場に対する根拠・理由(発言する材料)が何かしら生まれるため、結果として発言も促されます。

これらはオンラインの工夫としてお伝えしていますが、実はグロービスのファシリテーションのクラス・研修でお伝えしている基本と同じです。ファシリテーションスキルのベースがしっかりしていることが、やはり何よりも重要です。

ファシリテーションのベースが整っている上で、Zoomであればチャットやブレイクアウトセッションなどの機能を使いこなすことで、参加姿勢をつくり、活発な議論を生むことができます。チャットを使えば活発になるというわけでは決してないということは、押さえておく必要があります。

講師の次元を上げていく

最近、リアル研修が良いかオンライン研修が良いか、という対立構造が出てきます。この対立構造には、疑問を感じます。

我々の働き方が変わったように、研修のあり方も変わっています。すなわちリアルとオンラインの対立ではなく、融合(最適組み合わせ)が進んでいるのです。

リアルならリアルならではの価値を、オンラインならオンラインならではの価値を最適に組み合わせる。リアル研修だから質が高い、オンライン研修だから質が低い、ということはありません。いかに融合させるかが、これから考えていくべきことでしょう。

ただ最適な組み合わせの前提は、リアル研修であろうとオンライン研修であろうと、再現性の高い教育を実現するために必要な、具体性の高い設計と高いファシリテーション力です。

リアル研修ではできていたがオンライン研修では難しさを感じる講師は、設計とファシリテーション力を改めて見直して見る必要があるかもしれません。実は、「教えているふりをしていなかったか?」と。

オンラインが当たり前になる時代において、オンラインで研修ができることは新しい講師の姿ではありません。リアルでもオンラインでも学びを最大化できる土台を持ち、リアル・オンラインそれぞれの良さを活かすことができる。

「講師の次元をあげていく」ことが、私たちに求められている使命だと考えています。

設計とファシリテーションに愚直に向き合ってきたグロービスとして、これからも組織知を集積・還流し、チャレンジを積み重ね、アップデートした講師とともにより良い学習の場をより多くのお客様にお届けしていきたいと考えています。

執筆者プロフィール
グロービス コーポレート ソリューション | GCS |
グロービス コーポレート ソリューション | GCS

グロービスではクライアント企業とともに、世の中の変化に対応できる経営人材を数多く育成し、社会の創造と変革を実現することを目指しています。

多くのクライアント企業との協働を通じて、新しいサービスを創り出し、品質の向上に努め、経営人材育成の課題を共に解決するパートナーとして最適なサービスをご提供してまいります。


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。