オンラインで創造する感動体験 ー自らの枠組みを越えていく

2020.06.08

前回、役員向けプログラム「知命社中」の研修事例から、「リアルで提供する価値は、オンラインでも変わらずに届けることが出来る。重要なのは、研修の背骨となる”設計”と”ファシリテーション”だ」というメッセージをお届けしました。

 

とはいえ、やはりリアルと比較して、不安を持たれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。多く耳にするのは、”感情の結びつき”や”感動体験”の創造はできるのか?という疑問です。言葉のやりとりに留まらず、場の空気感や気持ちの通い合いというエモーショナルな点への懸念はあるかもしれません。引き続き、オンラインで実施した「知命社中」の最終回・修了式の事例を紹介します。

オンライン上で揺さぶられた心

プログラム最終回は、集大成となる”各自のビジョン宣言(スピーチ)”、そして”修了式”だ。
多忙なエグゼクティブが、20冊に及ぶ書籍を読み込み、課題に取り組み、そして自身に向き合い続けたラーニングジャーニーを、オンラインでどう締めくくるか・・・。
仲間と共に学び語り合った来し方を讃え合い、ビジネスの場でも共に戦っていくことを誓いあう場。心に残るものでありたい。

知命社中のビジョンスピーチと修了式が、それぞれどのような場となったか。当日の様子を共有したい。

ー ビジョン・スピーチ
最終回は、8か月間磨き込んだビジョンを、一人ずつ宣言する場だ。
当日は画面操作などに気をとられず、スピーチに集中できるよう、各自事前に撮影したスピーチ動画を上映していく方法とした。準備時間を含め300時間以上をかけてきたここまでの道のりを、数分間にまとめあげるには、相当な思考投入が必要だ。当日早朝に、「差し替え版」を提出する参加者もいるほどに、想いが籠った渾身の一作が集まった。

オンラインで伝わりきるか懸念もあったが、画面越しに一対一で向き合う構図も相まって、動画に込められた想いや、そこに至るまで、あるいは進行形の苦悩や願いが、真っ直ぐに伝わってきた。オンラインならではの臨場感を纏いながら、同志の宣言に全員が立ち合い、プログラムは幕を閉じた。

ー 修了式
そして、フィナーレの場となる修了式。
修了式といえば、どのような場を想像するだろうか。グラスを片手に乾杯し、入れ代わり立ち代わり、思い出を語り讃え合う、そんな触れ合いから感動が生まれるシーンを想像するのではないか。感動の場を、オンラインでどう演出すればよいか・・・。

まずは、「今日は特別な場なのだ」という気分を高めていく工夫を施した。ビジョンスピーチまでの全てのプログラムを終え、ホッと一息の休息を挟む。
そして、修了式の時間が近づく頃、少しずつ音楽を流しはじめた。
zoomのバーチャル背景を、手作りの修了式バージョンに変更し、がらりと場面を一変させた。
また、鎌田は家から持参した礼服に着替え準備を整えた。(実際は、誰も「礼服」に気づかなかったが笑)

事務局による司会進行で修了式が開会した。
まずは、修了証と記念品の受け渡しだ。参加者には、事前に宅急便で送っていた記念品一式を、進行に合わせて開いていただくことで、サプライズ感を演出した。そしてついに、同梱したシャンパンで、画面越しに杯を交わした。格別の味わいだった。

歓談の進行方法にも工夫を凝らした。
オンラインという参加者間の自由な対話が難しい場において、偏りなく全員が話せる話題設定や、オリジナルムービーを活用して想い出を想起させるなど、楽しく笑顔と話題が絶えない場づくりを心掛け、あっという間の2時間を過ごすことが出来た。
これも偏に参加したエグゼクティブ諸兄の協力があってのことだ。

試行錯誤の中、手作り感満載の対応であったが、当日は、胸を熱くさせるシーンが何度となく生まれた。有事の厳しい状況下でも学びを止めず、修了した参加者一人一人にとっても、記憶に残る一日となればと願う。

場づくりは、準備段階から始まっている

今回は、開催途中でのオンライン切り替えのため、「ある程度コミュニティの関係性が醸成されていたタイミングだったから為せたのでは」という見方もあるだろう。そうかもしれない。
しかし、前回の記事の通り、重要なことは、何を伝えたいか・どういう状態になってほしいかを考え抜き、場を創ることだと思っている。
そして、オンラインでは特に事前の準備段階から徐々にムードを高めておくことを意識している。今回の修了式も、場づくりは手前から始めていた。

参加者には当日のイメージを事前案内しムードを作ることで、自然と「グラスを用意しておこう!」、「仲間とゆっくり労う時間として、落ち着いた環境で参加しよう!」とコメントが寄せられた。
参加者と一緒に場を創りあげたことが、成功の大きな要因となった。進んで盛り上げてくれた参加者に、改めて感謝したい。

枠組みを越えていく

なぜ、この場にここまで拘ったのか。
修了の場を参加者の大切な節目として記憶に残るものにしたいという想いはもちろんだが、改めて振り返ると、根底には、混迷の時代に不可欠なリーダーシップの必要性を強く感じていたからなのかも知れない。

当初、修了式はコロナ問題が落ち着いてから別途場を設けることも、選択肢の一つだった。「エモーショナルな感動体験はリアルでは出来ても、オンラインでは難しい」という”思い込み”が、我々の頭の片隅にもあったからだろう。しかし、変化する時代においては、自分の頭の中で決めた限界(常識)を超えてはじめて、価値を生み出すことにつながるということを、自らも体感する場となった。

戦い方のルールは今後も頻繁に変わることが予想される。世の中の変化を大局観を持って捉えられるリーダーなしには、企業存続は危うい。確かなものとして持つべき自らの軸すら、普遍的なものとは言い難いのである。だからこそ、時代の枠組みへの適応に留まらず、知の拡張を通じて自身の軸をアップデートし、新しいパラダイムを創造できるリーダーシップが不可欠なのだ。
修了の場が、それを体現するヒントとなればとも思う。

明確なオピニオンを持つことが、混迷の時代の武器

プログラム修了後も、参加したエグゼクティブはそれぞれのフィールドで更なるチャレンジを続けている。「全員がこのビジョンを実現したら、日本は変わる。」
参加者からの、このつぶやきが忘れられない。
引き続き、応援団長のつもりで関わっていきたい。同時に、参加された皆さん自身もネットワークを更に広げ、一層深めていって頂きたいと願っている。

不確実性が高い多様性の時代ゆえ、様々な意見・衆知を集める必要がある。同時に、最終的にはリーダーとして決断するに足る明確なオピニオンを持っていることが、混迷の時代に打ち勝つ上で不可欠な武器となるからだ。
だからこそ、一人でも多くのリーダー輩出に寄与したいと、今、改めて強く思う。

 

【編集後記】
オンラインでのエモーショナルな創造への懸念は、提供側である私たちも持っていましたが、写真から当日の楽し気な様子をお感じ頂けるのではないかと思います。(思わずこちらも笑顔になってしまいます^^) そしてこの場への拘りは、枠組みを超えて価値を創造するという私たち自身の在り方の体現の場にもなり、リーダー育成に向け、更なるアップデートを続けて参ります。
(編集担当:塩谷佳未)
執筆者プロフィール
グロービス コーポレート ソリューション | GCS |
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※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。