DXは経営改革――。DXを実現させるために必要なのは、コミュニケーションと当事者意識、そして「設計」の思想(3/6)

2021.01.25

「DXは経営改革。 DXの課題と解決の方向性、求められる組織開発とは?」の全6回連載です。今回は、第3回目として「DXを実現させるコミュニケーションと、当事者意識を生み出す仕組み、求められる思想」をお届けします。

【第1回目】DXで成果を出すための「攻め・守り」の両側面」

【第2回目】戦略とDXの実現においては“現場の実行力”が鍵

5.DXの先行指標は「コミュニケーション」に現れる

望月:
では、もう少し「日本企業のDXが進まない現状/進まない理由」を深堀してみたいです。各務さんはどのような指標でDXが進んでいるのかを判断されていますか?

各務:
なにをパラメータにするかは難しいけれど、先行指標でいうと「コミュニケーション」です。どのように社内でコミュニケーションをされているかをベンチマークすると、その企業はDXのどのフェーズにいるのかがわかります。

望月:
面白いですね。進んでいないパターンは、上位職が上座にいて、報告だけで終わる会議をコミュニケーションの中心にしているみたいなものがあるでしょう。一方で、ヒエラルキー関係なく、チャットでバンバン意見を言えている場合は、進んでいるみたいなイメージですか?

各務:
例えば、それもありますね。 「コミュニケーションは設計するもの」です。このコミュニケーションは、こういうツールを使って、リードタイム、MTG有無など、コミュニケーションを設計し、設計通りにコミュニケーションができていると、だいたいDXが進んでいるといえる。それが、旧態依然の古いコミュニケーションが残っているとDXは進まない。デジタルサービス、デジタルビジネスで新しいものは作れているかもしれませんが、経営改革としてのDXは実現できておらず、会社は本質的には変わらないままなのです。

西:
確かにそうかもしれないですね。私は、業務の可視化を先にやったほうが、やりやすいかなと思っていました。可視化をした結果、コミュニケーション設計をするイメージです。ただ、確かに、可視化してもコミュニケーションが変わらないと本質的には変わらないですね。

各務:
そうですね。やはり、先行指標はコミュニケーションが一番だと思います。そして遅行指標としてKPIなど数字が見えてきている、人事制度がよりジョブ型に変わっている、などがあげられると思います。

西:
各務さんのお話しを、私たちがよく使う言葉に置き換えると「カルチャーが変わった」とか、「風通しのいいカルチャーになっている」という感じです。

各務:
なるほどです。私が、なぜ先行指標を明確に「コミュニケーション」に絞って話しているかというと、カルチャーという言葉だとふわっと漠然とした状態で捉えてしまうケースがあるからです。

例えば、表面的に「ティール組織になっているといいよね」と語られたりする。もちろん、結果ティール組織が望ましい。なおKADOKAWA Connectedはティール組織をある程度実現しており、正社員、派遣社員、ポジジョンなど関係なく、業務改善等を自発的に提案してくれます。その一丁目一番地はコミュニケーション改革でした。

6.「サービス型チーム」と「ロール(役割)設定」が主体性を生み、成長につながる

西:
各務さんのお話しを聞いて、コミュニケーションと主体性はセットだと感じました。当事者意識を持つ組織になっていった変化のプロセスはどのようにされたのでしょうか?

各務:
「サービス型チーム」と「ロール(役割)」を徹底したことです。まず、仕事をサービス(機能)と定義して、サービスの利用者に対する機能と品質も定義する。そしてサービスの中にロール(役割)というものを決めています。なお、ロールを定義するためには、仕事を棚卸して分割する必要があります。そして、横軸がサービス、縦軸がロールとした、「ロールアサインリスト」を作成して、誰は、どんな役割を担って、どんな責任を追っているのかを表で管理しています。

西:
なるほど、役割を明確にしているわけですね。

各務:
そうです、役割を明確にすることが重要です。ロールも、トランスペアレント(透明化)にしていて、このやり方をKADOKAWAにも浸透させています。

望月:
ジョブ型に近い感じですか?

各務:
近いです。ただ、ジョブ型とロール型が決定的に違うところは、ジョブは、ジョブディスクリプションで、Todoに近い。ジョブがなくなると、その人がいらなくなるという構造。一方、ロールは一つのサービスに対して、「ストラテジスト」「サービスオーナー」「スクラムマスター」「アーキテクト」「エンジニア」「オペレーター」というロール(役割)を6~7個くらい設定していて、それぞれのロールに期待値を明確にしています。

西:
具体的なタスクレベルではなく、抽象度高く「役割の状態」が定義されているイメージですか?

各務:
はい、スキルではなく、「こういうことができる人のレベル」と状態定義をしています。 タイプをみてロールをアサインします。キャリアパスも明確にしていて、ロールが上にあがると給料も上がる仕組みです。またロールが全員から可視化されると、例えばミーティングの際に、求められる役割を果たしていない場合は、周囲から「サービスオーナーなんだから、これはやってよ」と指摘され、本人も「そうだよね」となる。あと、ロールが上にあがるときの教育には、力を入れています。常に挑戦できる仕組みはありますが、上の立場に上がると仕事がきつくなるので、自分で上にいくか、現状に留まるかは自分で選択できるようにしています。

西:
それも本人の選択ですよね。

各務:
そう、自分で選択ができるのがロール型です。

西:
最近、日本で言われているジョブ型は、ロール型に近いですね。ただそもそもジョブを定義するところまで行っていないのが現状ですので、ロール型への移行もすぐには難しいでしょうね。

7.DXには、経営・組織・IT・ビジネスの各領域におけるアーキテクト、「設計」の思想が欠かせない

望月:
さて、今の話はDX進まないという話の一つだと思いますが、日本企業のDXの現状はどのように俯瞰されていますか?

各務:
まず、デジタルビジネスを進めているのは、基本的にいいことだと考えています。ただ、デジタルビジネスを進めた後、次のステップが曖昧ではないか?と。具体的にいうと、デジタルビジネスをやった後に、そこで得た学びを踏まえて、経営・組織・IT・ビジネスという各領域をどのような仕組みにして、アーキテクトするのかという「設計」の思想をもった人が不在なのではないか。「とりあえずデジタルビジネス始めましたが、次どうするの?」って困っているのではないか、との仮説をもっています。

望月:
改めて確認したいのですが、「デジタルビジネスをしている=DXが推進されている」というわけではない、別物として考えたほうが良いということですか?。

【続き(4/6)はこちらです】

執筆者プロフィール
グロービス コーポレート ソリューション | GCS |
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※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。