人材育成お悩み相談室
研修をしても、仕事での実践が三日坊主で終わりそうです

執筆:今岡 祐輔

2018.06.21

グロービスの組織開発・人材育成コンサルタントが、育成担当者の方からよくいただくお悩みにお答えします。

【お悩み】人事部は採用活動だけでも手一杯なのに、今年度の研修企画を立てるように経営陣に言われました。社員に学ばせても職場で実践するのは三日坊主で終わりそうです。そうならないお薦めの研修プログラムはありますか? 

【お答え】目先の研修内容よりも、受講者の行動をどうやって変えていくかを考えましょう。

こんにちは。グロービスで法人営業をしている今岡と申します。これまで、大手の総合商社からIT系、広告、不動産など多様なお客様のために、選抜、階層別、公募型など様々な研修や人材育成のお手伝いをしてきました。その経験からわかってきた「本当に大事なこと」についてお話しさせていただきます。それは、「研修よりも、どうやって行動を変えてもらうかが大切だ」ということです。

◆研修内容(打ち手)から考え始めない

冒頭の質問は、非常によくいただくご相談です。一定のビジネスモデルが確立され、それで勝ち残ってこられたので、組織や人の能力開発には力を入れる必要がなかった。しかも、人事部は採用と育成を同時に行っており、研修の企画や実施を専門に担当する人がいない、という会社は案外多いものです。こうした会社は、昨今のビジネス環境の変化により、従来のやり方では思うように勝てず、現状を打破する新しい打ち手が出てこないなどの課題が明らかになってくると、育成や研修に目を向け始めます。

そこで注目するのが、部下育成営業力強化」「新規事業開発など、今起こっている事象の対症療法(打ち手)となりそうなテーマです。しかし、このような打ち手から考え始めるのは危険です。というのは、いくら研修を実施しても、実践性や効果が実感できず、研修会社やプログラムを変え続けることになりがちだからです。育成や研修は、事業の方向性を踏まえて、計画的かつ体系的に企画しないといけません。

◆どうやって行動を変えてもらうかを考える

こんなときに、私がお伝えするのは、「研修よりも、どうやって行動を変えてもらうかが大切だ」ということです。企業活動のすべては、利益という成果を出すための活動です。したがって、研修は仕事で実践し、成果に繋がる行動を導かないと意味がないと、私は考えています。

研修は道具です。道具を上手く使うためには、その時々に適切なものを選び、しっかりと使いこなすことが重要なのです。つまり、研修を企画する際は、成果を生める実践的な道具になっているか、与えた道具をいかに使い続けさせるか、という研修後の行動のところまで、しっかりと設計しなくてはなりません。

同時に、道具を与えただけでは、人の行動は変わりません。これは残念ながら真実です。仕事の実践が三日坊主になるのは、志が低いからではありません。むしろ、目標を決めたら、達成するまでやり切る意志の強い人のほうが稀で、その気になっても最後までやりきれないのが普通です。例えば、世の中にダイエット本が溢れています。おそらく日本の人口よりも多くの部数が流通しているのではないでしょうか。それだけのメソッドがありながら、今も尚、新しいメソッドのダイエット本が出版され続けています。それは、道具を知っていても、使いこなせない、あるいは、使い続けられないからなのです。

◆研修で行動を変えるための3つのポイント

本当に成果に繋がる育成や研修にしたいと思うならば、三日坊主になってしまう人の習性をよく理解しましょう。その上で、個人の「やる気」に左右されずに、道具を「使わざるを得ない」状況を作ることが、とても重要です。その状況を強制的に作り出すためには、3つのポイントがあります。

1 業務の中に、研修で学んだことを実践する場面を設定すること
2 研修を受けた人だけでなく、周囲の人も巻き込むこと
3 評価項目の中に入れて、上司と定期的にコミュ二ケーションすること

例えば、クリティカル・シンキング(論理思考)の研修を受講した人には、上司への報告、メール、提案書など何でも良いのですが、研修で学んだ論理のピラミッドや、思考のプロセスを毎日一度必ず使ってもらうようにします。そして、それがちゃんと実行されているかを誰かがチェックし、使っていない人には声をかけて実行を促します。さらに、MBO(目標管理制度)の中に「毎日使っている」という評価項目を盛り込み、上司とも定期的にコミュニケーションを取り、優先順位を高く保つのです。新しいやり方に慣れるまでには時間もかかるし、苦痛も伴いますが、強制的に実践する場面を入れて回数をこなすことで身に付き、そのうちに無意識でも使えるようになります。それが「行動を変える」ということです。ここまで徹底しないと、本当に意味のある育成や研修はできないのです。

この3つのポイントを押さえられない状態では、私は研修をお勧めしないようにしています。道具を与えただけでは、良いお手伝いができないのです。1時間の打合せであれば、プログラムの中身の説明は5分で、あとはずっと研修後についてディスカッションすることもあります。だから、研修後の打ち手も含めて作り込む覚悟をお持ちの方には、とことんお付き合いします! 受講者には楽ではないかもしれませんが、成果に繋がる研修を一緒に考えていきましょう。

 

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執筆者プロフィール
今岡 祐輔 | Yusuke Imaoka
今岡 祐輔

株式会社リクルートに入社、採用広告や不動産広告の営業、業務プロセスの設計に従事。グロービス入社後は、法人企業向け事業に従事。商社、不動産、広告、金融、IT、等幅広い業界を担当し、企業変革や戦略実現の支援を目的とした人材育成体系の構築支援、研修プログラムの企画・設計・実施を行う。現在は法人営業チームのチームリーダーを務める。

グロービス経営大学院経営研究科修了(MBA)


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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