人材育成お悩み相談室
海外展開しているのに「グローバル企業」の実感がありません 

執筆:谷口 学

2017.02.17

1人1人の社員の成長サポートのみならず、グローバル化や組織変革等々……。戦略を遂行するための肝ゆえに、幅広く難所も多いのが人材育成の仕事。グロービスの組織開発・人材育成コンサルタントが、そうした育成担当者の方からよくいただくお悩みにお答えします。

 【お悩み】 当社は、海外拠点が多く、海外売上比率も高いのに、「グローバル化」できているという実感がありません。どうすれば良いでしょうか。(製造業)

 

【お答え】「企業理念」の浸透がとても大切です

グロービス名古屋校を基点に組織開発・人材育成のコンサルタントをしている谷口学です。担当エリアが中部圏なので、自動車産業を中心とした製造業の顧客企業が多く、貴社のように海外生産・海外販売を推進しているところがほとんどです。その中には貴社のような「グローバル化足踏み企業」も少なからずあり、同様のご相談が増えています。

そうした企業に何が起きているのか――。第1段階の海外展開では、未開の地を少数の駐在員ががむしゃらに開拓すれば良かった、あるいは、自動車メーカーなどの海外生産拠点づくりに合わせてついて行き、言われたことを、きちんとやり続ければ良かった。しかし、状況が大きく変わりつつあるのです。

特に自動車業界では、部品のモジュール化が進み、ケイレツ超えが珍しくなくなっており、「自動車メーカーに言われるまま」では生き残れず、自ら事業展開を考えて実行しなければなくなっています。かつては、自動車メーカーの傘の下に入っていれば安全だったのですが、今では、自らの存在を声高にアピールする必要が出てきたのです。

では、傘の下から出て、激しい競争にさらされた時に、一番必要になるものは何でしょうか。経営戦略・マーケティング・技術力等々はもちろん大切なのですが、私が担当しているいくつかの企業が最終的に行き着くのは、「そもそも我が社の“らしさ”は何か?」「我が社が大事にしている理念やウェイは何か?」という根源的な問いなのです。この問いに答えることなく本当のグローバル化は無い、と私は思っています。

例えばA社は海外売上比率が8割超ですが、経営層や海外拠点トップはほとんど日本人。日本本社は内向きで、本社にいる多くの社員が海外拠点とはあまり密な連携をしていません。日本である程度のポジションを獲得したA社には、独自の「強み」や「戦い方」がありますが、海外拠点ではそれに対する理解・活用・伝承が全くと言ってよいほど進んでいません。

例えばB社。グローバルでトップ3に入る事業を持つ優良企業ですが、「良いものを作れば売れる」的な職人気質が色濃く社内に残っています。しかし、海外展開が進む中で社員の多様性が高まるだけでなく、顧客の要求も多様化しており、日本人駐在員が「良いものを作れば・・・」という信念を持っているだけでは、現地社員に伝わらないのはもちろん、海外市場で製品が受け入れられることも難しくなっています。

A社、B社が今問い直しているのは、グローバルで戦う上で改めて我々は何を大事にしなければならないか、という企業活動の根っことなる「価値観」や「原則」。言い方を変えると、「企業理念」や「ウェイ」の再構築と浸透の活動が始まっているのです。

本当の「グローバル化」を推進するためには、「理念」や「ウェイ」を置き去りにすることはできません。「企業理念ファースト」ということが、私からのお答えです。

 

<参考文献>
・理念・ウェイ浸透の難所や乗り越え方は、『ウェイマネジメント』(東洋経済新報社)に詳しい。


<編集部のおすすめ>
「理念浸透」へのグロービスのアプローチ
 

 

執筆者プロフィール
谷口 学 | Manabu Taniguchi
谷口 学

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。豪ボンド大学経営大学院修了(MBA)。
大手SI企業に入社し、SEとして複数のシステム開発に従事した後、ITコンサルティング会社に入社。大手PCメーカー、大手複写機メーカーなどのCRMプロジェクトに携わり、情報システムの構築や、業務プロセス/体制の構築・改善などのコンサルティング活動を行う。
グロービス入社後は、グロービス名古屋校にてスクール運営部門を統括し、スクールの制度・インフラ整備、受講やキャリアに係わるアドバイスなどを実施。現在は、法人営業部門にて、企業の人材育成に関わる営業・提案活動に従事する傍ら思考系科目の講師を務める。

CTIジャパンコーチングプログラム応用コース修了。
JIPCC認定キャリア・コンサルタント/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー。


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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