ブログ:コンサルタントの視点
女性リーダー育成の3つの壁ー③
~女性を対象とした次世代リーダー研修現場を通して~

執筆:吉岡 恵

2015.11.24

女性リーダー育成に特徴的な難所とその乗り越え方を、弊社がこれまでお手伝いした事例を元に考察する大好評ブログの第3弾は「組織の理解」の壁に注目します。
女性リーダーが活躍するために本人の頑張り以外に必要なものについて、コンサルタントの吉岡恵が考察します。
3回のシリーズの最終回は「組織の理解の壁」についてです。

女性リーダー育成にについて、これまで2回に渡って「人選」「モチベーション」の壁についてお話してきた。

第1回 女性リーダー育成の3つの壁ー① 「人選の壁」
第2回   女性リーダー育成の3つの壁ー②   「モチベーションの壁」

今回は最終回として「上司を含めた組織の理解」について考えていきたい。

 

女性リーダー育成における「組織の理解の壁」とは?

受講者の方々が研修において様々な気づき・学びを得、自らのありたいリーダー像の実現に向けて頑張ろうという状態を作れたとしても、職場でその方々が十分に活躍出来ているかというとそうではないという話を聞くことも多い。

特にどのような点が難所となってくるのか。「上司の関与」と「組織風土とのGAP」の2つが大きな壁になっているケースが多いと筆者は感じている。女性リーダー育成と併せて既に検討されていることも多いと思うが、改めて整理してみたい。


(1)上司の関与の仕方

女性部下が研修を通してありたい姿を考え、その実現に向けて前向きな姿勢で業務に取り組んでいこうとしても、実際に育成にあたる上司の関与が変わらない限り、結果としてチャンスが与えられず、受講前と同じ業務を繰り返すだけになってしまうという話を良く聞く。ではなぜ上司は変わらないのか?要因は色々あると思うが、①変わらなければならないという認識がない、②どのように変えれば良いかわからない、などの話を伺うことが多い。

①変わらなければならないという認識がない
そもそも女性部下が受けた研修の内容を知らないため、本人がどう変わったかを上司が理解していないことが多い。その結果、研修終了後に自分のサポートが必要だという認識がないため適切なサポートが出来ていない。

②どのように変われば良いかわからない
研修を通して部下が変わったことは感じているものの、自分の関与をどのように変えれば良いかわからない。
これらを踏まえると、研修内容を上司に認識してもらった上で、適切なサポートをして頂けるよう研修終了前までに仕組みを整えておくことが必要と考えられる。


(2)組織風土とのGAP

近年、制度自体は各社整えつつあると思うが、実際に運用が上手く回っていないため多様な働き方が出来ないという声は多く聞く。また、過去からの慣例で勤務時間帯や取引先との関係などにより特定職種には女性がいない、長時間残業して頑張る人間が評価される傾向があるなど、組織風土として多様性のある働き方がしづらいという話も聞こえてくる。

第1回で述べたように女性リーダー研修では多様な価値観を認め合い、自分らしいリーダー像を描くことの重要性を伝えることが多い。そのため、この様な風土だと自らが目指したいリーダー像とのアンマッチが生じてしまい、ありたい姿を目指すことをあきらめてしまう可能性もある。

組織風土を変えていくことは容易ではないが、継続して取り組む必要があると考える。

 

「組織の理解の壁」の乗り越え方

組織風土や従業員の認識により乗り越え方は様々考えられるが、ここではリーダー研修と絡めたいくつかの対応方法についてご紹介したい。


(1)女性リーダー研修への上司・メンターの関与

まずは女性部下がどのような研修を受講しているのか、その研修を通してどのように変化したのか上司の方々に理解して頂くことが、職場でサポートして頂く上での一歩になると考える。そのため、研修開始当初から上司の方に関与して頂くことが重要である。例えば初回のオリエンテーションへの参加や最終コミットメントの聴講などが考えられる。また、受講者1名1名にメンターを付け、研修期間中伴奏してサポートして頂くような取り組みも解決策の1つであろう。メンター制度を通して組織全体にも女性活躍に対する意識付けが広がっていくという効果も期待できる。

 
(2)上司向け研修の実施

女性部下が持つ価値観や多様なリーダー像を受け入れ、その活躍を支援するためには、上司自身が多様性を受け入れる必要がある。しかしながら、自らとは異なる価値観を受け入れることは簡単ではない。そのため、女性リーダー研修と並行して上司向けの研修を設け、多様性を受け入れることの重要性とその方法論について考えることで、多様なリーダーが活躍できる職場作りに繋がり、結果として女性が活躍できる機会も増加すると考えられる。

 組織風土の変化には時間がかかる。最近女性リーダー育成に着手した組織においては、女性活躍に対して総論賛成ではあるものの、現場ではなかなか十分な理解が得られていないのが現実であろう。しかし、岩盤のように固い企業組織であっても、目を凝らせば地殻変動の兆しをそこここに見出すことが出来ると考える。報じられる限りでも、ここまで男性ばかりだった金融機関の法人営業部で女性を抜擢するなど、組織を刷新する動きが見られる。連載第1回で、女性リーダー育成に対する会社の本気度が問われるという女性側の視点を取り上げたが、まさに組織風土変革においても、本気度が問われるといえるだろう。

 

以上、3回にわたって女性リーダー研修の現場を通して見えてきた育成上の難所について述べてきた。真に女性リーダーが活躍する環境を作るためには本人だけでなく、上司や周囲の認識も変えていく必要があり、打つべき施策は多岐にわたる。

しかしながら、筆者が研修でお会いした受講者の方々は素晴らしい方ばかりであり、この様な方々がリーダーとして活躍できる状況を是非実現していきたいと思う。

女性リーダー育成プログラム(WLP)のご案内

女性リーダー育成プログラム(Woman’s Leadership Program)は、女性リーダー候補を対象とした、リーダーとしての基礎的なスキルとマインドを学ぶプログラムです。

執筆者プロフィール
吉岡 恵 | Megumi Yoshioka
吉岡 恵

神戸大学工学部卒業。大学卒業後、IT企業に入社し、システム構築やプロジェクトマネージに携わる。
グロービス入社後は、企業向け人材育成組織開発部門(コーポレート・エデュケーション)において、人材育成・組織開発プロジェクトの企画・設計・運営に従事。IT、サービス系企業、製造業など幅広く業界を担当している。


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

コラム/レポート