ブログ:コンサルタントの視点
女性リーダー育成の3つの壁ー②
~女性を対象とした次世代リーダー研修現場を通して~

執筆:吉岡 恵

2015.08.24

女性リーダー育成に特徴的な難所とその乗り越え方を、弊社がこれまでお手伝いした事例を元に考察する大好評ブログの第2弾は「モチベーション」の壁に注目します。
「リーダーになりたくない」という女性たちの心中は?
女性リーダー育成の壁とその乗り越え方について、コンサルタントの吉岡恵が考察します。
3回のシリーズの第2回は「モチベーションの壁」についてです。

女性リーダー候補のモチベーションの壁とは?

前回は、女性リーダー育成には「人選」「モチベーション」「上司を含めた組織の理解」の3つの壁があること、うち人選の悩みとして「スキル・マインド共にばらつきが大きいこと」に着目した。今回は「モチベーションの壁」について考えていきたい。


傾向1 女性を対象とした取り組みへの冷めた視点

 女性リーダー育成プログラムに参加することになり、「せっかく与えられた機会だから頑張ろう」「キャリアアップを目指しているのでチャンスだ」と前向きに捉える方は一定割合いらっしゃる。しかし、弊社の知る範囲ではあるが、表向きはポジティブにふるまっているが、本音を聞いてみると実はネガティブな意見が数多く出てくるということがある。 以下のような声がその一例である。

・政府の方針に従っているだけで本気ではないのではないか
・参加することで、管理職になることを強要されると困る

 コメントからは「本当に自分のためになるのか」という不信感、冷めた視点があることが窺える。

傾向2  「リーダーになる」ことへの拒否反応

人事部の方とお話をしていると女性はリーダーになりたくないという人が多いという声を良く聞く。確かに受講者の多くも「私はリーダー(管理職)になりたくない」と言っていた。しかし本当にそうなのか。過去の取り組みからは少し異なる風景が見えてきた。

ある企業において、自身が仕事上大切にしている価値観や拘りを考えるセッションを取り入れた。その際に出てきたキーワードは「自らが主体的に行動して成果を出す!」「成果に対する拘り」「新たなチャレンジ」などである。

これらのキーワードこそ、まさにリーダーに求められる要素、企業がリーダーに身につけて欲しいと思っている要素であろう。つまり、口では「リーダーになりたくない」と言っているが、実際のところはリーダーとしての行動を志向している人も多いのである。

このギャップはどこからくるのだろうか。過去の取り組みで見えてきたのは、「リーダー」=「管理職」、「管理職」=「長時間労働で自分が先頭に立って周りを鼓舞して引っ張る人」という固定概念があり、そのようなリーダーにはなりたくない(なれない)という考えだった。そうであるならば、リーダーの概念が変われば、なりたいと言う人が増える可能性はある。

「リーダーになりたくない」という女性たちの言葉を鵜呑みにすると、本質を見誤りかねないことに注意が必要だろう。

 

「モチベーションの壁」の乗り越え方

ここまで、多くの女性リーダー候補が抱えるネガティブなマインドに注目してきた。それではこれらのマインドを変え、モチベーションを高めるためにはどの様にすべきか。過去の事例から重要と考えられる点をいくつか述べる。

(1)取り組みの目的を明確に伝える

自社で女性活躍を推進する理由は何か、また女性リーダー育成を実施するのは何故か、という目的を受講者本人にも明確に伝えることが重要である。ある企業では事実として女性に能力開発が必要な理由を率直に説明した。その会社では同じ職位でも男女で得られる経験や育成機会に差があり、結果として能力差が顕現化していた。「だから不足している能力を埋める研修をするのです」と受講者に伝え、能力開発に向けたマインドセットに成功した。

もちろん、伝え方は組織風土や受講者の状態に合わせて工夫する必要があるが、重要なのは上述のような「私のためになるのか」という不信感に向き合っているというサインを示すことである。

(2)対象者の状況に合わせたマインドセットの実施

当初は「リーダーになりたくない」と思っている受講者も多いため、段階を踏んでリーダーになることに対するモチベーションを高めていくことが重要である。たとえば、プログラム当初は「リーダー」よりは「個人としてモチベーションが高まる要素は何か」に焦点を当て進行して行くことも1つの考え方である。

また、オリエンテーションに過去受講者に参加頂き、当時の不安や懸念、プログラムを受講して感じたことなどをリアルに語って頂くのも不安感やネガティブ感情を軽減する機会となり効果的である。

(3)自分らしいリーダー像を描くこと

上述の通り、受講者はかなり固定されたリーダー像(管理者像)を持っている。そのため、女性リーダー育成において重要なことは固定されたリーダー像を押し付けるのではなく、一人ひとりがなりたいリーダー像を描けることが大切である。このプロセスを研修で実現するには精緻な設計が必要だが、実際にプログラムに組み込んだ筆者の経験では、リーダーになることに対して前向きな姿勢が表れてきたことが検証されていた。

上記に加え、講師や他社からのゲスト、受講生同士など同じ女性同士で刺激を受けることも総じてモチベーションを高める1つの手段として有効である。
 

上記すべての手法がすべての企業で当てはまる訳ではなく、受講対象者や企業風土などを踏まえて検討する必要があるのは言うまでもない。しかしながら、筆者をはじめ弊社がお手伝いする多くの取り組みで効果を発揮した手ごたえを感じているのでご紹介する次第である。

女性リーダー育成プログラムの今後の設計や実施のご参考になれば幸いである。

 

関連ページ:
第1回 女性リーダー育成の3つの壁ー① 「人選の壁」
第3回 女性リーダー育成の3つの壁ー③ 「組織の理解の壁」

執筆者プロフィール
吉岡 恵 | Megumi Yoshioka
吉岡 恵

神戸大学工学部卒業。大学卒業後、IT企業に入社し、システム構築やプロジェクトマネージに携わる。
グロービス入社後は、企業向け人材育成組織開発部門(コーポレート・エデュケーション)において、人材育成・組織開発プロジェクトの企画・設計・運営に従事。IT、サービス系企業、製造業など幅広く業界を担当している。


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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