ブログ:コンサルタントの視点
「強み」を活かすリーダーシップの開発

執筆:金田 裕香子

2015.01.20

部下は褒めて伸ばすのが大事と頭ではわかっていても目につくのは弱みばかり。そんな部下指導の悩みを抱えるリーダー向けに開発した「強み」に注目するセッションをご紹介します。執筆は金田裕香子です。

部下を褒めるのは難しい?

筆者は組織開発コンサルタントとして、クライアント企業の人材、組織の課題解決に日々携わる傍ら、ライフワークとしてもコーチとして個人の成長を支援する活動を行っている。最近、部下のモチベーションアップに課題を抱えた上司、あるいは、人事部様より、エースとして活躍していた人材をマネージャーに昇格させた途端、部下のマネジメントがうまくいかず苦労しているが何とかならないか、というご相談を多くいただくようになった。

「最近の部下はゆとり世代で使えない。仕事は遅いし、それでいて徹夜でやりぬくような根性も見えないし。<部下は褒めて伸ばせ、フィードバックは長所3つに対して短所1つにせよ>といわれるが、長所など見当たらないではないか。正直、自分でやったほうが早いから、ついつい手を出してしまい、気づいたら周りは指示待ちでやる気のない部下だらけ・・・」

このような状況に頭を悩ますリーダーも多いのではないだろうか。

 

「強み」は努力しないと見つからない

フロリダ大学の25年にわたる追跡調査の結果、自分の能力に自信を持っていたグループは持っていないグループに対して、年収面でも健康面でも有意な差が認められたという結果がある。

ビジネスでも同様の結果がある。部下がやる気を失う確率は、上司が部下に無関心である場合が40%、「弱み」にフォーカスされた場合は22%であるのに対して、上司が部下の「強み」にフォーカスをしている場合は1%に減少する。また、従業員が仕事に熱意を抱く割合は、企業の経営者が強みに着目している場合が73%であるのに対して、強みに着目しない場合は9%であるといわれている。(『ストレングス・リーダーシップ ― さあ、リーダーの才能に目覚めよう』 トム・ラス、バリー・コンチー著)。これらの結果から、ビジネスにおいて「強み」に注目し、それを活かすことがいかに重要かが分かるだろう。

一方で、「自分の強みを毎日活かしているか?」という質問に対して、Yesと答えた割合は、インド、アメリカ、カナダが30%以上だったにもかかわらず、日本は15%にとどまっていた。従来の日本の教育はどちらかといえば減点主義であり、飛びぬけて良い点を評価するよりは、目立った弱みがないことを好む傾向が強い。従い、頭では「部下の強みを見つけるべきだ」と分かっていても、無意識のうちに「弱み」に目が行ってしまいがちであり、「強み」は努力して意識しないとなかなか見つからないものであるといえるだろう。前向きにとらえれば、日本企業は「弱みをなくす」のではなく、「強みを見出す」マネジメントを取り入れることで、従業員のやる気を今以上に引き出せる可能性があるともいえる。

 

「強み」を活かしたリーダーシップの開発

「強み」を把握する方法はいくつかあるが、ここでは先日筆者が行った「ストレングス・ファインダー」を活用し、リーダーシップスキルを強化するワークショップを紹介したい。

ストレングス・ファインダーとは、経済評論家の勝間和代さんも推奨するWebで行う自己診断ツールであり、米国ギャラップ社が200万人に対して行ったインタビュー結果をもとに分類された34の強みの中から、自身のトップ5の「強み」を抽出することができるものである。

ワークショップでは、自身の「強み」トップ5の診断結果と合わせて、「今までの自身のキャリアの中における最高の体験エピソード」の発表と、部下育成に悩むミドルを描いたケースを用いたロールプレイングを実施した。その狙いは、自身の「強み」を理解することに加えて自分では「当たり前」と思っていた行動が、他者から見れば実は「強み」であるという認識のギャップに気付き、「強み」を見出すことの難しさを体感していただくことにある。

 受講者は、はじめのうちは遠慮がちだったが、エピソードを語り、その中に自分の「強み」が発揮されていることに他者からのフィードバックによって気づく、というサイクルが回りだすと、次第に自己肯定感が高まり、我先にと楽しそうにエピソードを語りだしていた。

 ワークショップ終了後、受講者にアンケートを行ったところ、以下のようなコメントをお寄せいだたいた。

 ・自分の強みを知ることで、今後の行動が大きく変えられることを実感した

・他者の強みにも興味が出てきた。まず部下の強みを知る。知ろうとしない限りそこに強みは存在しなくなってしまうことに気付いた

・最高の体験エピソードを振り返った時に、その時の上司の課題設定が自分の強みの引き出しにあったのだと気付いた

 

「強み」に好奇心を向け、活力ある組織に

挑戦レベルが高く、且つ、自身のスキルレベルも高いことに取り組むと、人は没頭している状態、いわゆるフロー状態に入るといわれている(『フロー体験 喜びの現象学』 M・チクセントミハイ著)。スキルレベルが高いこと、つまり「強み」を理解していることは、フローに入りやすい状態を理解しているともいえる。そして、部下がフロー状態で仕事に取り組める状態を作ることこそがリーダーの役割とも言えるだろう。

そのためにも、まずは、リーダー自らが自分の強みを客観的に理解し、そのうえでメンバーの強みに対して、意識的に好奇心を向け続ける。そんなリーダーたちが作り出す組織風土によって、日本企業の組織がさらに活性化することを願っている。

執筆者プロフィール
金田 裕香子 | Yukako Kaneda
金田 裕香子

東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻修了後、外資系大手農薬メーカーにて、研究員、営業、マーケティングに携わる。マーケティング部ではプロダクトマネージャーとして、既存製品のリバイバルプラン策定、新製品上市プロジェクトを担当。(株)グロービス入社後はスクール部門のマーケティングを経て、企業向け人材・組織開発コンサルティング業に従事。組織内における個人の成長支援をライフワークとし、人材育成プログラムの企画から実行までを行う。
米国CTI認定プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC) ,米国Profiles International社認定トレーナー


※文中の所属・役職名は原稿作成当時のものです。

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